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2021.10 阿弥陀南陵

日程:20211030日~31

集合:茅野駅 10/30 9:20

メンバー:森川、田中、赤星、駿谷

行程:10/30 茅野駅9:15→(タクシー)→9:45船山十字路10:0010:40旭小屋10:5013:15立場山~13:50アオナギ(幕営)

   10/31 C1 5:506:30無名峰~7:00 P3(撤退)8:4012:20船山十字路→(タクシー)→13:00茅野駅

 

10/30

 緊急事態宣言が明けたらみんな考えることは一緒ということなのか、往路のあずさ1号は乗客でごった返しており、聞くところでは臨時列車も出たらしい。登山者で賑わう茅野駅をあとに、予約していたタクシーで船山十字路に向かう。ここから旭小屋までは単調な林道歩きだ。途中、渡渉が連続して2回あるが、踏み跡が薄いので注意を要する(実際、復路で少し迷った)。

 旭小屋から薄い踏み跡を辿ってその裏側にある尾根に取り付くと、そのうち藪に突入してしまった。GPSで位置関係を確認し、左側(北方向)にトラバースして正規の稜線ルートに出ると、これ以降は、明瞭な踏み跡が尾根上に続く。

 立場山までの登りは装備が重いこともあってそれなりにキツイ。2300m付近から上は積雪があったが、ツボ足でなんら問題なかった。この登りを終えた後、赤星さんが、オレはザック、シュラフ、ピッケルを全て買い替えて4kg軽量化するんだ!と、鼻息荒く宣言していた。確かに、赤星さんの装備は大抵のものが年代物だ。

 アオナギでテント設営を開始すると、テントポールに違和感がある。今回は4テン装備であったが、ポールだけ別のテントのものを持ってきてしまったらしい…

 ここで、早く飲みたいオジさんたちの知恵が見事に結集された。立ち木から垂らしたロープでテント頂部を吊り、さらに立ち木にポールを十字に立てかけて、これにテント外壁を連結する。また、テント内では、ザックをできるだけ端に寄せて底面を最大限に広げる。さらに、テントの4隅に座った各自の頭でテント内壁を支え続ける。なかなかの体幹トレーニングだ。

…そんなこんなで酒を飲み干した18:00頃に、かなり早めの就寝となった。

 

10/31

 睡眠十分で4時起床。気温は0℃、ガスが濃い。上下ダウンと夏用シュラフだったが、4テンだったせいか寒さを感じることなく、よく寝れた。

 無名峰までのキツイ登りを超えると、あとは多少のアップダウンのみとなる。P1P2ともに左側(西方向)に巻き、北方向に延びる草付き斜面をトラバースすると、P3基部に到達した。

 駿谷がクライミングシューズに履き替えてリード開始。岩は乾いておりシューズはよくグリップするが、溶岩で凝集した石がポロっと取れてしまわないかどうか、とても気を遣う。

 最初の垂壁上部は、左側から岩がかぶっている。その岩の直下にハーケンがあることは事前に調べておいたので、ここで最初のクリップ。体を右によじるようにして、かぶった岩を通過すると緩斜面となり、次の垂壁の基部に大岩がある。この大岩に150cmスリングをかけて2番目のクリップ。この垂壁を5mほど登るとリングボルトがあったので、ここで3番目のクリップ。これを登りきったところには、ぼろぼろの捨て縄が架けられた2本のリングボルトがあったが、一方のリングボルトは岩から抜けている。残ったリングボルトに4番目のクリップ。そこからほぼ水平に10mほど進むとハイマツ帯があるので、ハイマツ4-5本をまとめてスリングをかけ、ロープをフィックスした。

 この後、フォローがタイブロックを使って登攀してくるはずだったが、なかなか姿が見えない。いつのまにか小雪も舞い始めてきて心細く感じていると、突然、なにかが落ちるような音がし、その瞬間、ロープがビンッと張られた。耳を澄ませてしばらく待っていると、懸垂下降で降りるよう指示する声が聞こえてきた。

 何が起こったかを気にしつつも、まずは落ち着くよう自分に言い聞かせる。ハイマツの根元に埋まり込まないように丁寧にロープをかけて、懸垂下降を開始した。支点を回収しながら皆の姿が視認できる地点まで降りたところで、ロープの末端がなぜか自分のロープ持ち手のすぐ下にある。1ピッチ30mだから50mロープじゃ足らないことに、そのときはじめて気づいた。

 幸いにも緩斜面だったので、ロープを握ったまま、2番目にクリップした大岩まで登り返す。懸垂支点にしたハイマツとの摩擦でロープが動かず焦ったが、これ以上ない最大筋力で引っ張って何とかロープを回収。次いで、この大岩に直接ロープをかけると、岩の下でロープが噛んで回収できなくなるだろうと判断したので、残置覚悟でスリングとカラビナで懸垂支点を構築する。

 再び懸垂下降を開始し、ようやく皆の元に戻ってきた。ホッとしたと同時に、今まで意識してなかった寒さを急に感じてブルっとした。

 状況を聞くと、メンバーの1人が最初の垂壁から少し落ちてしまったとのこと。リード以外のメンバーは冬靴での登攀を試みたが、やはりクライミングシューズとは違って凍った岩肌をしっかり捉えられず、左からかぶった岩の通過に手間取ったらしい。そのうち岩をホールドする手が寒さでかじかんできたので、いったん自ら基部まで降りようとしたときに、滑り落ちてしまった。打撲した程度で動けそうではあったが、大事をとってここで撤退とし、往路ルートを船山十字路まで自力下山することにした。積雪がある下りでは、安全重視で念のためアイゼンを出した。

この時期の八ヶ岳は気温が低いのに雪が少なくて毎年攻略が難しい。クライミング態勢で薄手の手袋では氷点下に耐えられず、雪が無いからピッケル・アイゼン登山とはならない。

 

 茅野駅前の“蕎麦処ひな”で、あずさ発車までの手短な反省会。お互いの無事と健闘を確認し、ビールの旨さを噛みしめた。(駿谷)